musk








私がサーフィンを始めた頃、サーフボードは、ショートボードとロングしかありませんでした。(それしかないって事もなかったですけど、殆ど。)
ロングボードは、オッサンかパドルの苦痛から逃れる負け犬サーファーがするものという感じ。(いかんせん、当時の世の中の評価では。)そして、ファンボードは、完全に初心者用のボードというイメージでしたね。
何処の海に行っても、皆、ペラッペラのボード。
膝波だろうが、厚いブレイクだろうが、ペラッペラ。
それしか見ないし、それしか選択肢が無いっていうか。

サーフショップに行っても、そんな感じ。
サーフィンの雑誌だって、それ以外のボードが紹介されている事も無い。

私も、何の疑問も感じる事無くショートに乗ってました。
それで、十分楽しかったので、不満を感じる事も無く。

そして、9年ほど前のある日、EC(エリック・クリステンソン)のフライド・フィッシュを初めて目にしたのです。

最初、それを見たとき、『何じゃ、このアウトラインは。オバQみたいだし、レイルはゴッツイし、フィンもウッドで出来てて、ビンテージか?それにしても変なボードだな。』って、何が何だか理解できませんでしたね。

でも、無性に興味が湧き、すぐに5’9”のボードをオーダーしたのです。
数ヵ月後、私の手元にボードが届き最初に試したのが湘南の由比ガ浜。

その日の波は確か、台風スウェルが届いていたと記憶しております。
サイズは、セットで頭前後。スロープの長いフェイスは、ライト方向にパーフェクトにブレイクする、ボードを試すには最高の日。

ゲッティングアウトするのに、最初、苦労しましたが、どうにかアウトに。

息を整える。

『来た。』

形の良いセットをキャッチ。

『ウァッ!』

恐ろしく速いテイクオフと、全く入っていかないレイル。
そのまま、ボトムでワイプアウトしましたね。

その後、何度かテイクオフしていくうちに、レイルを入れていくタイミングが解ってきました。

ショートの様に、テイクオフ後、一気にテイルを蹴って横に走って行くのではなく、しっかりとボトムまで降り、波のフェイスが少し柔らかくなった場所で、初めてレイルを入れていく。

初めて綺麗にボトムターンが出来た時は、もう、頭は真っ白ですよ。

ボトムからとてつもないスピードでトップに駆け上がって行く、その感覚は、それまで乗っていたショートボードでは、味わった事が無かったのです。要は、自分ではちゃんとしたボトムターンなんてした事がなかったんですよね。

その日、初めてボトムターンとトップターンを繰り返す、大きなラインのサーフィンが出来たんですね。

最高に気持ちが良すぎて、結構、前乗りしちゃってたみたいです。(ゴメンナサイ。当然、普段は、そんな事しないですよ。とにかく、楽しくて楽しくて、もう、自分をコントロールできなくなっちゃったんですね。)

あの日のフライド・フィッシュのサーフィンは、今でも、鮮明に覚えてますね。


始まりは、この日。
そう。この世界の扉を開いた日となったのです。

結局、私レベルのサーフィンでは、パフォーマンスショートボードの性能を、完全に引き出すことが出来ないし、自分のミスもボードがフォローしきれないんですよね。
ワイドでボリュームのあるフィッシュは、少々のミスは、フォローしてくれる。それに、何よりスピードが違う。ボードがスピードに乗れば、今まで出来なかった事が、簡単に出来るようになったりする。

もう、とにかく嵌りまくりました。
どんどんオーダーし、仲間内やお客さんにも乗ってもらいました。

こんなに面白い世界、他にも楽しいボードはたくさんあるんだろう。
って、次々に変態的なサーフボードに手を出していったのです。

ボンザー、クワッド、シングル...。

どれも、最高に楽しかったです。
人から変な風に見られたり、珍しがられたりするのさえ、何だか、快感に感じたりもしてました。

ボディーボードをやってる女の子から、「何あの人〜。」って思いっきり言われた事もありました。
ロングジョンを着て、見たことも無い変な形のボード持って浜を歩いてたんですね〜。その子からすると衝撃的っていうか、気持ち悪かったでしょうね。
私は、「もっと見ろよ!ネエちゃん。フフフッ。」って、心の中で喜んでいたのを思い出します。完璧な変態サーファーですよね。


まあ、とにもかくにも、衝撃的なその日から、私にとって、ショートボードに乗る機会が無くなってしまったのです。
テイクオフが速くスピードも出る。安定性も良い。小さなミスは、全部ボードがごまかしてくれる。

そうなりゃ、思わず惹かれてしまうのも無理ありませんよね。

もっと上手な人は、ショートでパッコーンってド迫力なリッピングが出来てカッコ良いですけど、それが出来ない私は、この手の変態ボードに乗って、変態プレイをする事で、新しいサーフィンの楽しみ方を覚えたんですね。

最近、サーフボードの選択肢が増え、それぞれの楽しみ方があって、サーフィン全体が盛り上がってますよね。波の無い日は、ボードの浮力に助けてもらう為、大きなボードでサーフィンしたり、パワーのある大きな波の日は、短くて機動性の良いボードで楽しんだり。

結局、私の場合、ショートボードでのサーフィンに限界を感じ、自分の足りないところをフォローしてくれる、オルタナティブ系のボードにばかり乗るようになったのですね。

オルタナティブ系のボードに乗り始めて以来、オッサン度が年々上がっていく一方で、サーフィンの方は色んな事が出来るようになりましたし、毎年、少しずつではありますが、進化しているように感じます。
これって、絶対、サーフボードのお陰だと思うのです。
また、こういったボードに出会えた事で、サーフィンのルーツを肌で感じています。

もし、ショートボードに乗られている方で、少しでも変態ボードに興味があるのなら、ぜひぜひ試される事をお勧めしますよ。新たな開拓地となるはずです。
最高の驚きが待っていますから。

そしたら、きっと貴方も私の様な『変態サーファー』になりますから。


出口の無い魅惑の世界『変態サーファーワールド』。最高ちゃんですよ。
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